直近一週間で気になったタイポップ / T-POP を紹介します。総選挙は野党圧勝という結果で幕を閉じたタイ。音楽でも若者の勢いがすごい。25回目です。(Cover: Yorch (#ยอร์ช / 요치 / ヨーチ))
前回の記事はこちら。
【目次】
- 1. 789SURVIVAL - LIMIT BREAK 24
- 2. THE7 - Chemistry
- 3. Dizzyboy - dazed
- 4. Mercury Goldfish x insKru - เมื่อวานเธอไปทำอะไรมา? (昨日、何かあったの?)
- 5. Yorch - Seven (7)
- [後記] MVが製作されました!& タイ総選挙の話
1. 789SURVIVAL - LIMIT BREAK 24
曲 名:LIMIT BREAK 24
歌手名:789SURVIVAL (789TRAINEE)
発表日:2023年05月11日
次世代の T-POP ボーイズグループサバイバル番組が遂に始動!『789SURVIVAL』オフィシャルソング『LIMIT BREAK 24』。プロジェクトが公になってから約9ヶ月が経過してからの番組スタートとなります。
2022年8月。サバイバル番組「789 SURVIVAL」の存在が公になりました。
無事にオーディションが開催され、メンバーが決定。約半年間に渡り、「789TRAINEE」と銘打って、練習生たちの日常を Instagram・TikTok・Facebook (タイでFBは最有力SNS) といったSNSで配信し続けていました。
運営陣と練習生たちは、着実に努力の軌跡を世に発信し続けていたのですね。
練習生の様子や性格がわかるコンテンツが既に数多く存在しています。
練習生が出演したイベントの様子を見ていると、すでに熱狂的なファンが付いていることが分かります。これは話題になりそう。
あとデザインもセンスいいですよね〜。こういうところに内部の人間の熱意やこだわりが表れますからね。楽しみ!
(以前こちらで紹介しました)
2. THE7 - Chemistry
曲 名:Chemistry
歌手名:THE7
発表日:2023年05月12日
泰韓混合グループ「THE7」の2nd Single!『Chemistry』。
もう完全に K-POP の仕上がり。もちろん、7名中2名が韓国人というのも理由の一つではありますが、このグループ、作曲兼総合プロデューサーが韓国の方なんですね (FLUM3N)。シャリシャリとした高音が特徴の K-POP サウンドになるのも納得です。
同じような手法、すなわち楽曲製作を韓国に依頼しているタイのグループは他にもあります。4MIX、DVI など。
一方、国産にこだわっているのは 4EVE や ATLAS ですね。どちらにせよ、T-POPの進化を感じずにはいられません。
3. Dizzyboy - dazed
曲 名:dazed
邦 訳:目をくらまして
歌手名:Dizzyboy
発表日:2023年03月15日
謎のソロシンガー。国籍不明の男性ソロアーティスト・Dizzyboy のデビューシングル『dazed』。
楽器構成は非常にシンプル。ボーカルとギターとピアノのみ。
にも関わらず、どこかアンニュイなムードを漂わせる独特の音楽は、一度再生すればその異物感に思わず手を止めてしまうはず。
初めて出会ったのは新曲を一挙に集めたタイのプレイリストだったのですが、全編英語詞ということ、また国籍が不明ということで紹介していませんでした。が、少しずつ彼の素性が明らかになってきました。
彼・Dizzyboy は恐らくタイ人。そして古着店のオーナー。
バンコク最大級の規模を誇る週末限定夜市・チャトチャックマーケットの隣に位置する「ตึกแดงวินเทจ」というショッピングモールの5階に店を持っているのだそうです。
どうして分かったのか。ヒントは楽曲のクレジット欄にありました。
作詞、作曲、編曲、マスタリングまでを担当している
" earthisnotaplanet_ "
こちらは Dizzyboy の個人IGアカウントで、
歌手名の「Dizzyboy」とは古着店の名前だったのです!
ちゃっかり自身の古着屋の宣伝というか、歌手とのシナジー効果を狙っているのですね。やり手です。というか多才すぎる。
現在は2枚目となる『dawn』も発売している Dizzyboy。今後の活動にも要注目です。
4. Mercury Goldfish x insKru - เมื่อวานเธอไปทำอะไรมา? (昨日、何かあったの?)
曲 名:เมื่อวานเธอไปทำอะไรมา? (昨日、何かあったの?)
読み方:むあわーんたーぱぃたmあらいまー
邦 訳:昨日何かあったの?
歌手名:Mercury Goldfish
発表日:2023年04月29日
曲の半分以上が日本語詞でもはや楽曲は国籍不明です。
タイ人の思うかわいい好き感性をくすぐるような楽曲が特徴の男女2人組ユニット「Mercury Goldfish」。『เมื่อวานเธอไปทำอะไรมา? (昨日、何かあったの?)』では、突然相手のことが気になり始めて鼓動が高鳴る様子を描きます。
(かわいい感性について↓)
日本語歌詞だけを読んだところ、浮気してきた恋人に対して「お前なぜだか昨日の今日で急に浮かれた顔してるやん、昨日何してきたんあーしに隠れて?」としばき倒す内容だと思ったのですが、
中盤のタイ語歌詞『心の準備ができていない』『なんで恋しく思ってしまうのか』という歌詞を読むにミスリードだったっぽいです。ホッ。
5. Yorch - Seven (7)
曲 名:Seven (7)
歌手名:Yorch
発表日:2023年04月11日
あの BTS (防弾少年団) を生み出した Big Hit Entertainment (現: BIGHIT MUSIC) からのデビューが取り沙汰されていたタイ人練習生が、THE TOYS 製作の楽曲でタイポップシンガーとして装いを新たにデビュー!Yorch (ยอร์ช / 요치 / ヨーチ) で『Seven』。
と、勢いよく紹介してみたものの、楽曲から伝わるのは「熱をもった痛み」。何かを訴えかけていることは、MVを見れば一目で分かります。
タイトルの 'Seven' とは、一体何を意味するのか。ファンの方は見当がついているでしょう。
BTS の後輩グループとしてデビューを共にするはずだったチーム「Trainee A」の7名を意味しているのかもしれません。MVを見ていきましょう。
テーブルの上で踊り狂う Yorch。
燃えるバラの花。
ふと、目の前に現れたのは
燃え盛る太陽。
一人では到底立ち向かうことのできない、圧倒的な存在を示唆しているようです。
呆然とする Yorch。
そんな彼の前に現れたのは
6つの人影。
何かを悟ったかのように、Yorch は笑みを浮かべます。
視線の先にあるのは、一筋の光に照らされた6輪のバラ。
そして、手に持った一輪のバラを見つめる……
というシーンでMVは終わります。いかがでしたでしょうか。
過酷なデビューシステムで成り立っている K-POP の世界。こちらの記事では、Big Hit の練習生として精神的に疲弊しながら努力を重ねる Yorch の様子を見て取れます。
練習生のデビューは、自分たちが決められることではない。世界有数のエンターテインメント企業である HYBE の大人たちが決めること。それでも練習生たちは、いつかメンバーとして選ばれる、そのときの希望のみを糧に過酷な努力を積み重ねているはずです。
そのような状況で下された、デビュー白紙という決断。どれほどの絶望か。筆者は想像することもできません。
炎に包まれたバラは、練習生たちの象徴。
圧倒的な存在に心を燃やされてしまったような印象を与えます。
しかし、ふと現実に目を向けると、そこにあったのは綺麗に生けられたバラだったのです。
一筋の光は、スポットライトであり、また未来への希望でもあるのだと思います。
すぐに立ち直ることは難しいでしょう。
しかし、もしこのMVが心の傷を癒やす糧となっていたらいいな、と願います。
インスタのフォロワー数200万人超え。
圧倒的なグローバル認知度を誇るタイの若手アーティストが誕生した瞬間です。
[後記] MVが製作されました!& タイ総選挙の話
2023年4月9日付けで紹介した
タイ人シンガーソングライター・ฮันเตอร์ (ハンター) の『ท็อปในรุ่น』(学年トップ) という楽曲。リリースから4ヶ月が経ったいま、なんとMVが製作&公開されました!おめでとうございます!
曲のストーリーが鮮明に伝わるMVとなっております。こちらの記事とあわせてぜひご覧ください!ほっこりする可愛い曲です!
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タイで4年ぶりとなる総選挙が先日・5月15日に行われましたね。
事実上の軍事政権に対し国民がどのような審判を下すのかに最大の注目が集まっていたようです。結果は、野党の圧勝。しかし、第一党のみで政権交代が可能な議席数には達さず、連立政権を樹立することが必要不可欠という状況でありました。
第一党の「前進党」と第二党の「タイ貢献党」では、王室改革に対する姿勢が大きく異なるため、簡単に事が運ぶというわけではなさそうです。ですが、最大の焦点であった軍事政権からの脱却という目標を託された点では志は同じ。
18日には野党に投票した国民の希望通り、野党系で連立政権を組むことが決定しました。
軍事クーデターの懸念や、実際の政治運営への不安は払拭できるものではないですが、第一党のスーパー党首「ピタ」氏の手腕に期待しつつタイ人にとって幸せな未来が現実となることを願っております。(筆者、ただの外国人にすぎないんですけどね!)
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今回も最後までお読みいただきありがとうございました!
今後も引き続き、ホットな T-POP・タイポップス情報をトムヤム視点でお届けしていきます。
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