直近一週間で気になったタイポップ/T-POP を紹介し、タイの音楽の今を捉えるコーナー。第63回目。 (Cover: ATLAS)
紹介した曲は以下のプレイレストでもお聴きになれます。
前回の記事はこちら 。
【目次】
- 1. Wizzle - อัสคารามุด (Ohm, YaYa!)
- 2. EMPRESS - Blah Blah Blah
- 3. ATLAS - I Got That Magic
- 4. PUN - Goodbye
- 5. THEMOONWILLALWAYSBEWITHME - ดี
- [後記] タイに移住しました
1. Wizzle - อัสคารามุด (Ohm, YaYa!)
曲 名:อัสคารามุด (Ohm, YaYa!)
読み方:あっさからむっ
邦 訳:あっさからむっ
歌手名:Wizzle
発表日:2024年02月29日
T-POP に新たなガールズグループがデビュー!Wizzle で『อัสคารามุด (Ohm, YaYa!)』(あっさからむっ)。
Wizzle は「BRIQ Entertainment」に所属する練習生から選抜されたメンバーで構成された、タイの5人組ガールズグループ。昨年11月に『เปิดดิ (D-DAY)』(ALL BRIQ 名義) で一挙公開された23名の練習生から選抜された、BRIQ Entertainment 初のグループです。
(ボーイズグループにも期待がかかりますね!)
BRIQ Entertainment は、2010年代に「Third」「THANK YOU」といったアーティスト (※左記アーティスト名です!) が所属し、若者を中心に絶大な人気を誇った「Kamikaze」の後継にあたるレーベル。*1*2
※1 Third さんは TRINITY のメンバーとして活躍中。
※2 日本でも人気のタイ俳優・Up さんが出演されていた THANK YOU さんの MV(笑)(かわいい)
そのため、YouTube のコメント欄には往年のポップ・ミュージック好きが集結。Kamikaze の復活と活躍に期待するコメントが多数寄せられています!
楽曲『อัสคารามุด (Ohm, YaYa!)』ですが、摩訶不思議なポップスで驚きました!JともKとも被らない独特さ。というか、K-POP の影響が盛んな2020年頃からの T-POP とも被っていないませんね(笑)。これがタイ人の心に刺さる、純粋培養 T-POP なのか……!?今後の活動も注目していきたいと思います。
ちなみに、タイトルの言葉には特に意味はないそう (タイ人に聞きました)。
2. EMPRESS - Blah Blah Blah
曲 名:Blah Blah Blah
歌手名:EMPRESS
発表日:2024年02月20日
こちらも今作で記念すべきデビュー!タイ・T-POP の6人組ガールズグループ・EMPRESS で『Blah Blah Blah』。
PiXXiE や PREZELLE とは違う印象の EMPRESS。
UKガラージ、ハウス、エレクトロをミックスさせたサウンドは、タイで盤石の人気を誇る K-POP グループ・BLACKPINK を彷彿とさせます。歌謡曲的な要素が見当たらないので、音楽的には T-POP ではない印象も受けました。
なるほど、クレジットをみると、プロデューサーはアメリカ生まれ、欧米の音楽に触れて育った西洋人(SYPS さん)。
とはいえ、育ちはアジアだそうで、タイ市場での成功のエッセンスはかなり持っていると推察いたします。
ちなみに、楽曲的には HOT ISSUE という韓国のグループの『그라타타 (GRATATA)』を思い出しました。(解散済み)
コロナ禍以前の印象で恐縮ですが、タイ・バンコクは BLACKPINK の音楽が本当に似合う街!
初めてタイに訪れた2020年、街中に BLACKPINK のメンバー LISA の広告が溢れていたことがきっかけで、帰りの機内で彼女たちの音楽を聴いてみたら、僕の住んでいた北海道とは全く違った聴こえ方をしたんです。熱気とけだるさとカオスを抱えた街にぴったりで、しかもそこに存在した自分がとても魅力的に感じられたのです。よくメディアで言われていた「東南アジアで BLACKPINK が絶大な人気」の意味が分かったし、またここに戻って BLACKPINK を聴きたいと思った。街と自分が一体になって、かつ音楽を聴いて自分が魅力的に感じられる感覚は、日本ではあまり味わえないものだったから。
「BLACKPINK の音楽的特徴として、以前、世界的にヒットしたさまざまな音楽スタイルのごった煮”的趣がある」*3という記事を見つけましたが、世界中から観光客とビジネスを受け入れるタイの首都を偶然にも表現していたのかもしれません。
EMPRESS のデビュー曲『Blah Blah Blah』にもそのような印象を持ちました。今後の活動も楽しみです。
3. ATLAS - I Got That Magic
曲 名:I Got That Magic
歌手名:ATLAS
発表日:2024年02月28日
T-POP ボーイズグループでトップクラスの人気を誇る7人組。ATLAS (アトラス) の11枚目のシングルで『I Got That Magic』。
久しぶりのカムバとなった今作。前作『มังคุด (Mangosteen)』(マンゴスチン) とはまた異なる表情を見せてくれました!
ミニマルなフレーズの繰り返しは UKガラージを彷彿とさせ、迫力のある低音はダブステップの影響を感じます。スネアの音色も新鮮でいい!
一方でやはりタイらしさを感じる所以は、ポスト・コーラスの部分でしょう。先述の EMPRESS や BLACKPINK にはない、起承転結型の2種類のコード進行が存在しており、歌謡曲的な安心を与えてくれます。
ATLAS は T-POP グループの中で比べると、色々な表情を見せてくれるグループだと感じていますが(洗練された洋楽風R&B Pops『LOLAY』、
往年のJ-POPのように歌謡曲チックで安心する『รักกันวันเดียว (ONE DAY)』、
The Toys がプロデュースを担当したモダンチルな『เค้ามาก่อน ( Lovefool )』)
ひとつの一貫した特徴があります。それは、これまでのすべてのシングルのプロデューサーがタイ人であるということ。この一貫性は、T-POPアイドルグループの本質を定義し、他の国のアイドルグループとの違いを明確にします。T-POPアイドルグループの本質は、彼らが制作する各作品によって作り上げられるといっても過言ではない。チームワーク抜群の彼らの今後にも要注目!
4. PUN - Goodbye
曲 名:Goodbye
歌手名:PUN
発表日:2024年01月25日
タイの人気シンガーソングライター・PUN で『Goodbye』。
各種ストリーミングサービスで上位にランクインしているこの曲は、恋人に対する愛が無くなった自身の感情を、正直に伝えたもの。PUN 曰く、自身の経験や感情を正直に綴ったのだそう。魂のこもった楽曲です。
タイのラブソングは、恋の切なさ、苦しみ、葛藤を歌ったものが多いですが、この曲はエゴを純粋に書き出したもので、かなり珍しい作品。というか、タイに限らずとも珍しいですし、何より勇気がいること。
相手に愛がなくなったとき、相手に申し訳ないから自分に嘘をついたまま付き合い続けるか、それともすぐに正直に気持ちを伝えるか。皆さまならどちらを取りますか?
5. THEMOONWILLALWAYSBEWITHME - ดี
曲 名:ดี
読み方:でぃー
邦 訳:良い
歌手名:THEMOONWILLALWAYSBEWITHME
発表日:2024年02月20日
今日は歌謡曲的な楽曲が少なかったので最後はこれで!THEMOONWILLALWAYSBEWITHME (ザ・ムーン・ウィル・オールウェイズ・ビー・ウィズ・ミー) で『ดี』(でぃー / 良い)。
2020年から活動するタイのシンガーソングライター。タイポップス好きな方は1億回再生を記録したこの楽曲でご存知かもしれません。
新曲『ดี』(でぃー / 良い) は、今日がいい一日になりますようにと聴く人に爽やかさと安心を与えてくれる楽曲。何をするにもまずは自分を愛することが必要だよね、という現代の生き方に寄り添ってくれる彼の楽曲は、歌詞がわからずとも心が温かくなります。これが音楽の、タイポップスの力。
[後記] タイに移住しました
X (Twitter) や前記事と重なりますが、私トムヤム亜久津、タイに移住しておりました……!
【ご報告】実は、タイに移住してました。
— トムヤム亜久津 (@tomyumakt) February 28, 2024
皆さんに秘密にしていたことがあります。
T-POP大好きZ世代男子トムヤム亜久津、昨年秋からタイに移住しておりました。わー!
そしてなんとこの度、QuickJapanさんのWebマガジン「QJWeb」に寄稿することになりました!フー!!https://t.co/Ww1mDbWmhm
これからはタイ在住ならではの視点を取り入れつつ、今まで通り T-POP の現在地と魅力を発信していきますので、今後とも末永くよろしくお願いたします。
*
今回も最後までお読みいただきありがとうございました!
今後も引き続き、ホットな T-POP・タイポップス情報をトムヤム視点でお届けしていきます。
X (旧 Twitter)のフォローやコメント頂けると嬉しいです!またお会いしましょう。