2022年のタイポップのまとめ記事・その⑤ (最終回)!
2022年12月25日までに発表・発売されたタイポップ・T-POP の中から、
- 人気を集めた作品
- 筆者がこの1年でかなりハマった作品
をご紹介します。「トムヤム的!今週の #タイポップ #TPOP」特別編。
(前回・その④はこちら)
【目次】
- #41 Alec Orachi
- #42 MaxMillor
- #43 THE TOYS
- #44 Benjamin Varney
- #45 The Kopycat
- 🤯一言言わせて賞 (5組)
- 2022年のまとめは以上!
(※おさらい)
👑殿堂入りで賞...1組
👑衝撃でしたで賞...3組
👑勢いがすごいで賞...5組
👑タイで流行ったで賞...10組
👑とにかくあげたいで賞…26組
🤯一言言わせて賞…5組
計50組を紹介。本記事では「とにかくあげたいで賞」の後編 (#41~45)、「一言言わせて賞」(#46~50) を取り上げます。【前編】【中編】
#41 Alec Orachi
心の底から何かを渇望する、魂の叫びのようなものを感じるのには訳がありました。
14歳で単身オーストラリアへと留学した Alec Orachi は、ひどいホームシックに悩まされた。体を蝕む、孤独と憂鬱。その唯一の逃げ場が音楽だった。彼はすべての悲惨な思いを音楽にぶつけた*1のだと答えます。
世界のシティ・ポップを比較すると、なぜか日本の楽曲だけは物悲しい感じがするそうです (山麓 園太郎の「今日のタイポップス」#4 より)。日本には物悲しい雰囲気が似合う。好まれる。
タイとオーストラリアをルーツに持つ Alec Orachi は、今後もセンチメンタルさを求める日本人に新たな世界を見せてくれるでしょう。1999年生まれ、期待の新星。
#42 MaxMillor
Max Millor は 2019年頃から活動するシンガーソングライター。
楽器ごとに異なるコンプレッサーを巧みにかけ、思い通りの Lo-Fi ポップを創り上げるエフェクト強者。タイのドリームポップ・アーティストでは MaxMillor に適うものはいないのではないか、と思うほど一曲の世界観づくりが上手です。
真夏の暑い日の夜、街灯に照らされるアパートの薄暗い部屋でブランケットを被りながらベッドの上で感傷に浸る姿が自然と脳裏に浮かぶ、『วิเศษ (Magic)』(2022)。タイを中心に人気を博し、発表から約1年で1300万回再生を突破してします。
#43 THE TOYS
1995年生まれののソロミュージシャン・THE TOYS。幼い頃に両親が離婚し、音楽プロデューサーを務める母の元で育てられます*2。
幼い頃から楽器への興味があり、7歳でドラムとギターの練習を始め、2016年には第9回 Over Drive Guitar Contest で優勝を飾る腕前に成長。
2015年、YouTube に自身が作詞作曲した楽曲をアップロードし始めると、彼の初作品『หน้าหนาวที่แล้ว』が話題に。多くの芸能人にカバーされることで、一躍その名を世間へ轟かせました*3。
その後もヒット作を連発している THE TOYS ですが、2022年は2月に発表した楽曲『อาหมวยหาย (阿妹走)』がチャートを賑わせました。
同様にプロデュースでも手腕を発揮し、PPKrit の『FIRE BOY』は彼史上一番のヒット作に。(※PP Krit は「2022年のタイポップ」その1で紹介済み。)
THE TOYS はタイランド、いやアジアの宝です。
#44 Benjamin Varney
Benjamin Varney は、1991年生まれの俳優・歌手。タイとイギリスのハーフで、ロンドンで生後3年間を過ごしたのち、タイのチェンマイに移住。以後はタイで生活していたそう*4。
紹介する楽曲『Thai Tea (Ft. Mintra A.)』(2021) は、R&Bベースの洗練されたオルタナティヴ・ポップ。タイの音楽にみられる緩やかさや暖かみがほとんど感じられないな、と思っていたのですが、彼のバックグラウンドが影響しているのかもしれません。俳優業がメインらしいですが、凄く魅力的な声と音作りなのでぜひ次作が聴きたいところ。
#45 The Kopycat
2022年に発売された1stアルバム『SWIRL』をおすすめしたく、選出。
The Kopycat は2020年にデビューした、タイの3ピースインディーポップバンド。1950〜70年代に影響を受けた、ヴィンテージでオールディーズな楽曲が特徴です (YouTube 公式チャンネルより)。
総再生時間35分37秒・全10曲から成る1stアルバム『SWIRL』は、ギターを中心とした従来の音に Quicksand Bed のメンバー・Boripat Saengsiri がプロデュースするシンセが融合し、懐かしくもモダンなムードを醸し出す、儚く美しい音盤。
タイと国際的なインディーミュージックシーンの双方で彼らを有名にしたデビュー曲『My Baby』(2020) から始まり、続く『A Night Ride』(2020) が The Kopycat のスタイルを印象付けます。3曲目の『Painting』(2020) で雰囲気は一変。ヴィンテージなピアノの音色と、隠されていたもうひとりのボーカル・Ham の優しい歌声が、夢の中にいるような感覚へと誘う。そこからは The Kopycat の独壇場。『Ting a Ling』(2021)、『Everything You Do』(2021) といった人気作だけでなく、アルバムの世界観を創り上げるために描かれたであろう『Street Segment』、『Campfire』などの楽曲が続きます。
ラストを飾るのは、3曲目の『Painting』のリ・アレンジバージョン。夢の中へと誘われた感覚が思い出され、いま The Kopycat を聴いている自分を世界の外側から見ているような、不思議な感覚に襲われる。それと同時に、この至高の夢の終わりを儚くも認識させられる。
現代に生きる私たちは、スキマ時間をいかに活用するか、あるいは奪われるかといった忙しない日常を送っています。アルバム一枚をまるごと聴くなんて、難しいと言うか、労力のかかる作業になっている気がしている。けれど、このアルバム『SWIRL』は、時間以上の価値がある作品だと心の底から思います。耳で味わうストーリーが、ここにあります。
🤯一言言わせて賞 (5組)
最後の5組は、筆者の中で何かが引っ掛かった(?)アーティストを紹介いたします。
#46 Baby Mic Candy
2022年にデビューした、日泰混合4人組HIPHOPグループ・Baby Mic Candy (通称: BMC)。レーベルは Sony Music。
かつて、福岡県を拠点に活動していた男性アイドルグループ・10神ACTOR (てんじんあくたー) にルーツを持つ日本人2名・タイ人1名で3名体制プロジェクトがスタート。そこに『2gether』などで有名な GMMTV に所属経験のある俳優・FIAT が加入。タイ語と日本語が混ざりあった唯一無二の歌詞と世界観で聴く人を楽しませてくれます。
2022年の11月に発売したシングル『ลองคุย (TRY)』は、HIPHOP色薄めのチルでキュートなポップナンバー。ステージパフォーマンスも楽しく、以前ブログで取り上げさせていただきました。メンバーの GOLI さんお墨付き。ありがとうございます。
マジで嬉しいです且つ的確ww https://t.co/vkCmIlyP5P
— GOLI (@OKGOLIRA) 2022年11月25日
そして、彼らの目標は、タイ最大の野外フェス「Biga Moutain Music Festival」に出演すること。
……だったのですが、なんと2022年12月、念願の出演を果たしました!!
プロジェクトのスタートから3年。地域の壁、音楽の壁、言葉の壁、様々な壁を乗り越えながらここまで辿り着いた4名。おめでとうございます!
まだまだ伸び盛りな彼らが、さらにタイポップスを熱く盛り上げてくれることでしょう。
#47 LAZ1
LAZ1 は、タイ大手ネット通販サイト「LAZADA」とタイの大手テレビ局・Channel3 がタッグを組んで結成された、タイの5人組ボーイズグループ。
2022年10月に発表した3rd Single『ไม่ตอบเลยน้า (What's The Matter ?)』がヒット中。
ラインの着信音をサンプリングしたものが曲中に散りばめられており、最初聴いたときはアノイングでしたが、意外とくせになります。2ヶ月で1000万回再生を突破、グループ史上最大のヒットとなっています。
#48 RachYO
ラッパーにして、YouTube のチャンネル登録者数324万人を数える RachYo。12本の1000万回超えMV、そのうち3本は1億回超えというカリスマラッパーです。日常を切り取ったユーモア溢れる歌詞と親しみやすい庶民的なスタイルで人気を博しています。
彼が2020年に発表した楽曲『ขวัญใจรถแห่』をご紹介。
タイトルの英訳は「My fans loved me!」なのですが、タイ語を直訳すると「イケてる車のパレード」。どうやらスラングでもないらしく、なんやねん、一体。このアホらしさが堪らなく良いです。音階もタイらしくて好(ハオ)。
#49 Waii x Koen
女性ソロシンガーの Waii と、セクシャルマイノリティのタイ人インフルエンサー・Koen がコラボした楽曲『หากเธอเคยรักใคร ( IF YOU LOVE )』。俳優集団・Domundi の出演するタイBLドラマを配信する MandeeWork の2022年テーマソングとして、ちょうど1年前の2021年12月30日に配信されました。
黒髪ショートで赤いドレスに包まれた筋肉隆々のボディには思わず目を疑ってしまうのですが、それもそのはず、Koen さんはクィアであったり人と違ったりする自分を愛してあげようというメッセージを発信し続けるインフルエンサー。英スタンフォード大学で精神療法を学び、学士号を取得しています*5。
そして、BLドラマでありながらLGBTQI+を支援しようとする姿勢を見せる MandeeWork も尊敬に値します。
洗練された楽曲と、タイにありがちなサビで全員謎ダンスする映像の組み合わせがクセになり、何回見ても飽きません。MVは1700万回再生を突破中です。
#50 F4Thailand (BRIGHT, WIN, DEW, NANI)
最後の50組目。何で締めるべきか考えた結果、やはり2022年もタイドラマ抜きにタイポップは語れないと思い、紹介させていただきます。
『F4Thailand - BOYS OVER FLOWERS』は、2022年にタイのテレビ局・GMMTV で制作されたテレビドラマ。タイ版・花より団子として、普段タイドラマを見ない層にも話題となりました。主演の4名・BRIGHT, WIN, DEW, NANI が歌った主題歌・『Who am I』を紹介させて頂きます。
ドラマの世界観を表現した、洗練されたポップチューン。コメント欄からも分かる通り国境を超えて人気を獲得しており、再生回数は2000万回を突破しています。
また、『2gether』『F4Thailand』と立て続けにヒットドラマに出演した Bright Vachirawit と Win Metawin のIGフォロワー数は、それぞれアジアトップクラスの1700万人、1400万人を数えます。2年前と比較して、約3倍の増加*6。インフルエンサー事務所としての機能も持つ GMMTV、大成功を収めています。
2023年度も話題に欠かさない予感。
韓国のウェブトゥーン原作のドラマ『私のIDはカンナム美人』(Beauty Newbie)、日本の漫画が原作のドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』のタイ版を GMMTV 制作で放送予定です。チャウヌがメタウィンだよ!タイのチャウヌはメタウィンですよ!!!(大事なこと(?)なので2回言う(?))
世界の音楽への探究心からタイポップスに興味関心を持つリスナーがいる一方で、筆者のようにドラマがきっかけとなる(正確には旅行なのですが)リスナーもいると思います。
タイエンタメが地位を高めることで、タイポップシーンがさらに盛り上がると嬉しい。どうせなら、皆んなで楽しみたい!筆者トムヤム亜久津、そう思います。
2022年のまとめは以上!
ここまでのお付き合い、本当にお疲れさまでした。お読みいただき嬉しい限りです。ありがとうございます!
筆者の好みが反映されまくった50組だったかと思います。ミーハーだし。可愛い子とイケメン好きだし。あと、50組の枠にはどうしても収めることができず、紹介しきれなかったアーティストもまだまだ沢山いらっしゃいまして……。それほどタイポップスが魅力的、ということですね。どうか温かい目で見て頂けると幸いでございます。
▶ ぜひ、読者の皆様のお気に入りの一曲も教えてくれると嬉しいです!
お気軽にお送りください。