本稿では、NIKKEI ASIAにて2022年4月10日に掲載された記事『Thailand's 'boys love' dramas stealing hearts around the world』(邦訳:タイの”ボーイズラブ”ドラマが世界中を虜にしている)を要約します。
この記事では、
(1) タイのボーイズラブドラマが世界で流行している理由
(2) 世界に与えている影響
(3) ボーイズラブドラマのルーツ・歴史
(4) タイ政府との関係
の4点について理解することができます。
著作権の関係上、記事をそのまま翻訳したものは掲載いたしませんが、
機械翻訳でほぼ100%正確に理解することができるので、ぜひ併せてご覧ください。
■[英→日]機械翻訳済みの記事
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【目次】
1. 概要
この記事では、タイのボーイズラブドラマが世界中で人気が高まっている理由と今後の展望について述べられています。
タイBL界のスター「Bright&Win」、「Ohm&Nanon」へのインタビューや、関西大学非常勤講師の堀あきこ氏の解説が記事の内容を支えています。
機械翻訳で約3,000文字と比較的ライトな分量で、タイBLドラマ産業の背景を知ることができます。
次項からは、記事の内容をキュレーションする形をとって要約していきます。
2. 要約
(1) タイのボーイズラブドラマが世界で流行っている理由
- 誰でも楽しめる内容になっているから。
ストーリーが複雑でないため、年齢や性別を問わず誰にでも魅力を打ち出せる。(Win) - (タイに限らず)BLは、男性よりも社会的に劣っていると見られる女性が現れないため、ジェンダーのない、純粋なラブストーリーとして楽しむことができる。普遍的なメッセージがある。(関西大学・堀あきこ)
- BL作品は日本をルーツとするが、日本で制作されてきたBLテレビドラマ・映画でオリジナルの品質を満たすものはあまりなかった。(堀あきこ)
一方、タイのBLドラマは精巧に作られている。加えて、タイのプロデューサーはファンと繋がるために多大に努力している。 - BLドラマが世界的にファンを増やすにつれ、タイ政府がBLドラマを世界クラスのコンテンツとして認識するようになった。
タイ政府による後援が行われている。
(2) 世界への影響
- ドラマ「2gether」がメガヒットしたことにより、主演俳優のBrightとWinはそれぞれInstagramで1000万人以上のフォロワーを獲得している。
- 2020年には北京、東京、ソウル、ニューヨーク、ロンドンでファンとのライブミーティングを開催した。
- 2人の大学生の物語を描いたロマンティック・コメディー「2gether」は、2020年2月にタイで放送されたあとYouTubeに投稿され、何億回もの再生回数を記録した。
- 日本では、同年7月に「RakutenTV」で配信開始した後、映画・ドラマの年間ランキングで1位を獲得した。
さらに、2020年にはタイのBLドラマが第1位、2位、4位にランクインし、中国と韓国の作品を含め、BLを描いた作品がトップ10のうち6つを占めた。 - 2021年でもブームは衰える兆しを見せていない。
2021年の日本のテレビドラマのトップ10のうち5つはタイBLだった。 - タイのBLドラマは、ファンの社会的意識にも影響を与える。
フォロワーは、環境を保護するための俳優の取組み(筆者注:Brightのブランド"ASTRO")や、被災地を財政的に支援するための嘆願をサポートする。
その人気がアジアを超えてヨーロッパやアメリカにまで及ぶため、関連する消費も生み出される。
(3) ボーイズラブドラマのルーツ・歴史
- タイのBLドラマは「Yシリーズ」と呼ばれ、1970年代に日本で生まれたゲイ男性の文学ジャンルにルーツを辿る。「Yシリーズ」のYは、「やまなし・おちなし・いみなし」(クライマックスなし、オチなし、意味なし)という同人作品にありがちな3要素の頭文字を取った日本語の「やおい」に由来する。
- 日本の同人作品は1990年代にやおいとして、タイを含む海外で人気を博した。
- しかし、BL作品は主に日本の小説やコミックに限定されていたため、タイのコンテンツ産業は日本風のBLドラマや映画を輸入するしかなかった。
- 一方、日本のコンテンツ産業において作られるボーイズラブ作品は、質の高くないものが多かった。
「ほとんどのテレビドラマプロデューサーが中年男性であり、ゲイのラブストーリーを愛する女性をエキセントリックだと見なしている(堀あきこ)」状況が続いていた。 - しかし、タイでは他のアジア諸国に比べてLGBTQを受け入れていることもあり、BLは若い女性を中心に人気がある。
タイのコンテンツ産業がクオリティの高いBLドラマを一貫して作くるようになり、世界的な人気を博した。
■(3)のまとめ
ボーイズラブ(BL/やおい作品)が好きという人口は世界的に一定数いたのですが、
その発信地となっていた日本では良質なドラマ・映画が作られておらず、小説やコミックに限られていた。
LGBTQを受け入れる土壌があったタイで質の高い作品が作られるようになり、2020年にドラマ「2gether」がネット配信を通して眠っていたBLファンの心を一気に焚き付けたことで、世界的にブームとなったのです。
(4) タイ政府の認識
- タイ政府は、BLドラマを世界クラスのコンテンツとして認めている。
K-POPのように世界を席巻する可能性があると考えている。 - 2021年6月、タイの国際貿易促進局は、BLコンテンツをプッシュする最初のオンラインイベントを開催した。
多くのアジア企業が参加し、2日間で3億6000万バーツ(筆者注:13億3200万円 ※1バーツ=3.7円で計算)相当の取引を成立させた。
3. まとめ
以上が、記事内容の要約となります。
タイのボーイズラブドラマが世界的に流行するまでの過程を知ることができて面白かったですね。
ボーイズラブ作品の最初の発信地が日本である、ということを初めて知る方も多かったのではないのでしょうか。
(補足)ボーイズラブの歴史や研究をもっと知りたい、という方はこの本が入門書として最適です。本記事を深く掘り下げた内容になっており、BL好きなら必見の一冊。(Amazonにリンクします)
(補足)タイの芸能界・国全体が抱える問題点
最後に、記事には記載がありませんでしたが、個人的に感じている「タイの芸能界/国全体が抱える、2つの歪な構造」を指摘して終わりにしたいと思います。
① LGBTQ+への支援不足
1点目はLGBTQ+への支援不足です。
男性同士(ゲイ)のファンタジー恋愛を売り物に莫大なお金を稼いでいるのであれば性的マイノリティへの還元が行われるべきですが、現在そのような取り組みはほとんど行われていません。
つい先日も、同性婚を認めようとする法改正案が内閣で否決され、ニュースになりました。タイで同性婚は認められていません。
「セクシャル・マイノリティの楽園」というイメージを持たれがちなタイですが、実際は差別・区別に苦しんでいる人たちが数多くいます。
(こちらの記事も併せてご覧ください↓)
②人種差別(ルッキズム)
2点目は人種差別(ルッキズム)です。
簡潔に申し上げると、タイ人のうち、人種的な要因で肌が白い人(=中華系タイ人)はわずか約10%と言われていますが、タイの芸能人のほとんどがその10%の人々によって占められています。
タイ人の頭の中には
「中華系は勤勉で働き者である」
⇒「ホワイトカラーで給料が高い職に就く(屋外で仕事をしない)」
⇒「日焼けをせず肌が白い」
⇒「肌が白ければお金持ち」
というイメージがあり、国民全体として色白信仰が存在しています。(要検証)
そのため、人種差別かと言われると難しいところではありますが、
中華系タイ人は国民のわずか10%しかいないことを考えると異常です。
K-POP業界が、不健康な体型管理や半強制的な美容整形、ホワイトウォッシュに代表される人種差別で批判を浴びているように、
タイの芸能界も外国からの注目が高まるにつれて足を引っ張られるリスクが高まるのでは、と考えています。
LGBTQ+フレンドリーな方向に少しでも舵を切るなどして
どうか、皆が幸せになる方向で、タイドラマ産業が発展しますように。
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本稿は以上になります。最後までお読みいただきありがとうございました。
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